EMジャブジャブ作戦は、諫早湾の潮受け堤防開門調査に反対するために行われていることが、EMの問題点を長年指摘しているOSATOさんの調べで判りました。
開門反対のためのEM活動???
私もEMジャブジャブ作戦に関して、福島県と沖縄県の事例と比較したブログを書きました。
OSATOさんのコメント
私がEMジャブジャブ作戦に関して書いたブログに、OSATOさんからコメントを頂きました。
コメント内容は、有明海周辺の自治体で広くEMジャブジャブ作戦が行われている事と、長崎県が開門調査に反対している事から、EM開発者の比嘉照夫氏が脳内で、EMジャブジャブ作戦と開門調査反対を結びつけたストーリーを作った可能性の指摘でした。
さすがに比嘉氏を長年調べているOSATOさん。比嘉氏の心理として可能性が高そうに思えます。
OSATOさんのコメントには、諫早市でEM製品を販売しているEM販売長崎の紹介も有りました。
非常に印象深いサイトで、農水省諫早湾工事事務所の協賛と諫早市教育委員会の後援を受け、EM団子を諫早湾調整池に投入する活動の報告が書かれていました。
一生懸命にEM団子を作った子供たちの作文も寄せられていました。
EM団子とアオコ
EM団子はEM環境活動をしている人たちが、河川や海などの環境改善効果があると主張して投入しています。
諫早湾の調整池でどの様な環境問題があるか検索したところ、毒性の強いアオコの発生が報告されていました。
EM開発者の比嘉氏は、連載コラムでEM団子でアオコを消失させたと書いています。
EM団子の主成分は米ぬかを加工したEMボカシですが、EMボカシだけでは水中に沈み難いためEMボカシ5gに対して95gの土を加えています。その他の成分と製造法はpdfを参照してください。(pdf1,pdf2)
この組成のため、EM団子を湖沼に投入すると速やかに水底に沈みます。
EM団子によるアオコ抑制の検討論文
アオコは生物学用語でシアノバクテリアと呼ばれています。
シアノバクテリア対策にEM団子を使う効果について、国内の論文は見当たりませんが、海外では詳細に調べた査読付き論文が発表されています。
オランダWageningen大学Miquel Lurling氏たちの「SHALLOW LAKES Cyanobacteria blooms cannot be controlled by Effective Microorganisms (EMR) from mud- or Bokashi-balls」という論文です。
論文内容の概略を紹介します。
浅い湖のアオコ汚染で苦しむオランダで、オランダEM協会がEM団子でアオコ対策出来ると提案しました。
オランダ当局はオランダEM協会の提案を断りましたが、オランダEM協会の主張に科学的な根拠が見当たらないため、Miquel Lurling氏たちが検討しました。
Miquel氏たちは、藻類用の培地にオランダEM協会が提示する範囲を越えた濃度までEM団子の比率を変えて加え、湖から採取した藻類の増殖抑制効果を検討しました。
その結果、ほとんどの濃度でEM団子にシアノバクテリア増殖を抑制する効果は有りませんでした。
EM団子でシアノバクテリアを消滅させるためには、光を通さないほど多量のEM団子が必要でした。
この条件では、シアノバクテリア以外の藻類も生きていけなくなりました。
Miquel氏たちは、アオコ問題が発生している湖の水にEM団子を添加する検討も行っています。
藻類用の培地を使うよりも、より湖の状況に近い状態で検討したところ、EM団子を加えるとシアノバクテリアが多くなるという結果でした。
オランダEM協会の主張と逆の結果だったのです。
この結果についてMiquel氏たちは、EM団子がシアノバクテリアの増殖に必要なリンを供給したためと考察しています。
EM団子の危険性
Miquel氏たちの検討結果から、湖にアオコが発生した場合、EM団子を投入すると、アオコによる環境汚染が進行する可能性があることになります。
EM販売長崎とNPO法人諫早市連合婦人会は平成17年から諫早湾にEM団子を投入しています。
アオコの増殖にはリンが必要ですが、家庭排水などから供給されるリンの量は変動が大きいでしょう。
それに対して、EM団子は安定したリンの供給元になります。
環境浄化のためにEM団子投入を続けている人たちには大変残念な事ですが、EM団子が調整池と有明海の環境汚染を促進していた可能性は否定出来ません。
ただし、以上のことはMiquel氏たちの報告が諫早湾の調整池にも当て嵌まった場合です。
実際にどの様な結果になっているのかは、EM団子投入前後の状況を再現し、アオコの増減を調べる必要があります。
諫早湾潮受け堤防開門調査に関しては、賛成する人たちと反対する人たちの深刻な対立があります。
ですが、調整池のアオコを減らしたいという点で、ほとんどの方の意見は一致すると思います。
反対する人物がいるとすれば、EM関係者だけでしょう。
Miquel氏の論文で、一つ残念な事があります。
それは、この論文がEM発祥の地・日本ではなくオランダで書かれたということです。
EM団子は諫早湾の調整池だけではなく日本全国の河川、湖沼、海に投入されています。
さらに海外でも多くの国々でEM団子が投入されています。
今は顕在化していないというだけで、実際にはアオコの毒による被害が起きているのかもしれません。
私たち日本人の手で、EM団子の危険性を明かにする必要があるのではないでしょうか。
結び
アオコ=シアノバクテリアは藍藻、あるいは藍色細菌とも呼ばれます。
シアノバクテリア(藍色細菌)は光合成する細菌、すなわち光合成細菌の一種です。
EM開発者の比嘉氏が、EMは乳酸菌と酵母と光合成細菌を共存させていると主張しています。
光合成細菌を共生させているとされるEMが、同じ光合成細菌のアオコを死滅させることが出来るのでしょうか。
比嘉氏は微生物資材を販売しながら、微生物その物には関心を持っていないのではないか?
奇妙な事ですが、私にはそう思えてなりません。
2013年8月8日追記)
国土交通省「第4回 鹿野川ダム水質検討会」資料(pdf)によると、EM団子1g中に5.8mgのリンが含まれています。
EM環境活動をしている人たちは、諫早湾調整池に100万個のEM団子を投入する計画を立てていました。
実施されたとすると、膨大なリンが投入されたことになります。
関連するまとめ、有明海・諫早湾・環境問題のまとめを作成しました。
2013年12月2日追記)
2013年12月1日の日本科学者会議東京支部第17回東京科学シンポジウム:ニセ科学問題分科会に参加された農学系の微生物研究者の方からメールをいただきました。
以下に転記します。貴重なご意見と解説、ありがとうございます。
呼吸発電 様
拝啓
先日の東京科学シンポジウムでのご発表を拝聴し,EMがまだ生き延びていると知っ
てブログを拝見いたしました。
EMがここまではびこっているとは,驚きでした。専門家として不明を恥じます。
「EM団子の危険性」の記事で,やや不正確な表現がありましたので,ご指摘しま
す。ブログページから投稿しようとしたらエラーが出てしまいましたので電子メール
でお送りします。
「光合成細菌を共生させているとされるEMが、同じ光合成細菌のアオコを死滅させる
ことが出来るのでしょうか」のところはちょっと不正確です。比嘉氏らEM信者が言っ
ている光合成細菌は酸素非発生型(水素供与体として硫化水素H2Sなどを使う)のも
ののようです。アオコ(シアノバクテリア)は酸素発生型(水素供与体として水H2O
を使う)です。光エネルギーを使って炭酸固定をする点では「同じ」ですが,両者は
水素供与体・生息域が異なります。
○○○○
○○大学大学院
○○研究室