2013年03月10日

ニセ科学という名の絶望

 東日本大震災から2年経とうとしています。
大震災と福島第一原子力発電所事故の後、被災地を中心にEMなどのニセ科学が猛威をふるっています。
私がネット上で関わったニセ科学について、少しだけ書かせていただきます。

EM(有用微生物群)通称EM菌
 EM系のグループは、東日本大震災後最も大規模に被災地で活動を行っています。
特に福島県内での活動が顕著です。
福島県のEM菌支援団体リスト

 EMの開発者、比嘉照夫氏が2013年3月7日にコラム、新・夢に生きる第69回を公開しました。
比嘉氏はコラムの中で「EMによる放射能対策は、予想外の成果を上げています」と述べています。
しかし、この発言には疑問点が多々あります。

 2012年11月にEMー1が農研機構の放射性物質吸着資材に関する効果実証試験対象に選ばれました。
ところが、申請者のEM研究機構は辞退してしまいました
本当にEMで除染出来るなら、何故実証試験に申請したのに辞退したのでしょうか?

 EM研究機構はかつて、EM散布で作物中にセシウム137が移行し易くなると発表しました。
しかし何故か発表資料を削除しました。
大切なお知らせ、EM菌と米のとぎ汁乳酸菌で除染している皆さんへ

 フジテレビで2012年10月17日に「福島でまかれる"EM菌" 検証!除染効果はあるのか」という番組が放送されました。
番組の中で比嘉氏はフジテレビの記者に誤りを指摘されて、返答出来ませんでした。
フジテレビEM菌報道の文字起こし

参考:EMに関連するTogetterのタグ


EMBC
 原発事故からわずか10日後に、外交ルートを使って政府与野党首脳に微生物除染を働きかけた団体がありました。
原発事故後の日本 知られざるもう一つの危機

 この団体は台湾で放射能を消滅させる実験を行ったと主張していました。
その後資料が非公開になりましたが、魚拓があります
魚拓を読むと、放射能が消滅したのではなく、培養液のセシウム137が菌体に移っただけでした。

参考:EMBCに関連するTogetterのタグ

米のとぎ汁乳酸菌
 原発事故後、米のとぎ汁乳酸菌による放射能防御が提案され、多くの人が実践しました。
しかし、提唱者から矛盾する発言が出てきました。
米のとぎ汁乳酸菌の真実
続・米のとぎ汁乳酸菌の真実

 また提唱者が、微生物に関して本質的に誤った認識をしていることも明らかになりました。
ノロウイルスと米のとぎ汁乳酸菌とガン治療

参考:米のとぎ汁乳酸菌に関連するTogetterのタグ

ナノ純銀除染
 2011年夏頃から、ナノ純銀で放射能を消せると主張するグループが現れました。
このグループは複数の政治家の支持を得て、週刊誌にも報道されました。
ナノ純銀除染

 しかしナノ純銀除染に興味を示していた政治家の一人、下村博文・文科大臣はナノ純銀に除染効果が無いと国会で明言しました。
ナノ純銀除染に捧げるレクイエム?

参考:ナノ純銀除染に関連するTogetterのタグ

ニセ科学という名の絶望
 上記例の様に、ニセ科学は被災者に希望を提示しましたが、それらの希望は決して叶えられません。
ニセ科学は、自らを説明する際に科学的な用語を用いますが、その本質は非科学的です。
奇しくも福島第一原発事故は、ニセ科学の本質を明かにしたと思います。

 ニセ科学は信じた人々に一時的な安心を与える代わりに、より深い絶望をもたらします。
人々の不安と不幸を糧に拡大するニセ科学は、現代の魑魅魍魎とでも呼ぶべき存在です。

 東日本大震災2周年を控えて、ニセ科学諸派の活動が再び活性化してきました。
ニセ科学に惑わされて悲しむ方が少しでも減ることを願い、私も警鐘を鳴らしたいと思います。

2013年3月14日追記
ガジェット通信に寄稿しました
Togetterに転載しました
震災と原発事故で苦しむ被災地で暗躍するニセ科学を、より多くの方に知っていただきたいと思います。
posted by Breathingpower at 09:41| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
科学リテラシーが乏しい人に専門家が嘘をいうのは
なんら詐欺師による詐欺とかわらない事を自覚して欲しいですね
Posted by ななし at 2013年03月10日 15:43
このHP の活動自体には共感するのですが、「ニセ科学」とかいう、変な言葉
使うなをやめてください。pseudo-scienceの訳語は「似非科学(エセ科学)」あるいは「疑似科学」です。

ニセ科学とかいう変な言葉は、それ自体が、
「一見、世の中で普遍的に使われているに見えて、実は、事故顕示欲が強いあるいは金儲けしたい詐欺師が勝手に作り出した、そもそも言葉の定義すらよくわからない意味不明な言葉」
ということで、まさに「ニセ科学」の批判対象であるエセ科学と全く同じ特徴をもっています。

「ニセ科学」という変な言葉を使うことで、エセ科学追放運動から多くの人(とくにきちんとした理系教育をうけてきた科学者)を運動から遠ざけてしまっている(まともな科学者からみると「ニセ科学」という言葉自体がもっとも胡散臭く見える)ということを、どうか認識してください。
よろしくお願いいたします。
Posted by 通りすがり at 2013年03月15日 13:29
確かに、ニセ科学で多くヒットしてしまいます。
コメント欄には時々興味深い内容がありますね。
ここのコメント欄もわかりやすいです。
http://onigumo.sapolog.com/e75968.html

米のとぎ汁乳酸菌提唱者などがいかに、信者へ放射能恐怖心を与えたか、また、その恐怖心を埋めるための商材を提供しているという事実を冷静に考えて欲しいと思います。
Posted by 観察力 at 2013年03月15日 22:54
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