ウィキペディアで引用している文献に、米ぬかに関して興味深い事が書かれているので紹介します。
「米ぬかによる細菌の発育増殖性と莢膜の形成性について : 高頻度に分離される細菌の場合」
リンク先の右側にあるプレビューをクリックすると論文を見ることが出来ます。
細菌などの微生物を培養する時に、培地というものを使います。
培地には寒天培地と液体培地があります。
ウィキペディアで紹介しているデータは、米ぬか溶液を寒天で固めた培地での実験結果です。
実験に使った米ぬか溶液は、細菌を通さないフィルターを通していますが、加熱殺菌はしていません。
水分が少ない寒天培地では、細菌はゆっくり育ちます。
培地としての米ぬか寒天培地は、肉エキスベースの普通寒天培地より培地の性能が劣っていました。
細菌は生育しますが、普通寒天培地より時間がかかったのです。
米ぬか寒天培地の性能が低い理由は、水に溶けない米ぬか成分を分解するのに時間がかかったためと考えられます。
ところが、米ぬか溶液を液体培地として使った場合には違う結果が出ました。
動物や人間の血液をベースにした液体培地よりも、米ぬか液体培地の性能が優れていました。
細菌は血液培地よりも、米ぬか液体培地で早く元気に生育しました。
培地の原料に血液を使う事があるのは、病原菌が人間や動物の体液成分を栄養として生育するからです。
そして米ぬか液体培地で、細菌が血液中より早く元気に育つことが確認されました。
水の割合が多い液体状態の米ぬか溶液・・・米のとぎ汁は優秀な培地だったのです。
細菌にとって血液は栄養豊富で大好物ですが、免疫という邪魔者がいます。
細菌は米ぬかも大好物ですが、水分が少ないので思うように育つことが出来ません。
水分が少ないコメや米ぬかに少し水分が加わると、細菌よりも乾燥に強いカビの仲間が育ちやすくなります。
糠漬けで微生物の生育が穏やかなのは、糠床の水分がコメのとぎ汁より少ないことも理由の一つです。
糠床に炒り糠を使う事がありますが、米ぬかを炒る事で加熱殺菌出来ます。
糠漬けの発酵に必要な乳酸菌などの微生物は、野菜から供給されます。
米のとぎ汁は栄養豊富な上に邪魔な免疫もいない、微生物にとって理想的な環境です。
黒糖などの糖分を加えると、微生物は更に元気良く育ちます。
元気に育つ微生物の中に病原菌が入っていたら、どうなるでしょうか?
冒頭で紹介した文献には、病原菌が米ぬか液体培地で早く元気に育つ結果が出ています。
飲食目的に米のとぎ汁で微生物の培養を行う場合、病原菌を取り除いておかないと大変な事になりますね。
どうぞご注意願います。
参考まとめ「米のとぎ汁乳酸菌関連ツイート」