2013年07月29日

EMと2つのデジャヴ

 EM(有用微生物群:通称EM菌)の普及活動を行っている推進団体は全国にありますが、九州の有明海周辺でのEM普及活動について、興味深い出来事がありました。
諫早湾の潮受け堤防が閉じられたことで生じた漁業被害に対して、EMで回復出来るとされ、多くの自治体でEMが採用されています。
 これに関連して、EM開発者の比嘉照夫氏は『水門をあけさせないための活動です。』と話しています。
この発言は、EM普及活動の目的は干拓を推進することであり、環境活動は名目ではないかという疑問に繋がります。
詳細はOSATOさんのブログと私のまとめを参照してください。
開門反対のためのEM活動???
EMジャブジャブ作戦

第一の既視感
 私は比嘉氏の発言を見て既視感を覚えました。
EMの普及活動をする人たちは、潮受け堤防が閉じられたことで被害を受けた漁業関係者に、優しく寄り添います。
『EMで豊かな海を取り戻せる』と希望をもたらします。
豊穣の海を失い、追い詰められた人たちは、藁をもすがる思いでEMに頼った事でしょう。
EMで海を回復出来るという話は、干拓を推進する人たちにとっても望ましい話だった筈です。
EMを普及させれば、海を汚したという批判を受けなくてもよくなるからです。
ただし、EMが海を回復出来るという科学的根拠が示されていないことには留意する必要があります。
 有明海周辺でのEM普及活動は、福島第一原子力発電所事故後、福島県で起きたEMの放射性物質除染活動と良く似ています。
EMによる除染についてはフジテレビがEM菌報道番組を製作しています。
フジテレビ記者のインタビューを受けた被災者たちは、政府も自治体も助けてくれない状況で、EMに希望を見出したと話します。
生きていく希望が持てたと、涙ぐみながら話す人もいました。
番組内では実測データや専門家の意見が紹介され、EMによる除染に効果がないことが次々に明らかになりました。
この結果に対して、インタビューを受けた比嘉氏の説明は二転三転し、結局EM除染の根拠はありませんでした。
 不思議なことに、EMで除染出来るという根拠が無いにもかかわらず、福島県内では行政やマスコミからのEM批判は起きませんでした。
EMに関わる余裕が無かったためだとは思いますが、中にはEM除染を放置することで、住民の不安を和らげる効果があると考えて、容認した人たちがいるかもしれません。
 原子力発電所のあり方に対しては、推進する人、反対する人、容認する人、それぞれに考え方が大きく異なっています。
ですが、すべての皆さんに知っていてほしい事があります。
EMを製造販売しているEM研究機構は、『原子炉』の登録商標を特許庁から取得しているという事実です。
原発に反対する企業が、原子炉の商標を持つことなど、有り得るのでしょうか?
EMは被災者に寄り添う姿勢を示していますが、EM除染は原発推進にも都合がよいのではないでしょうか。
そして、EM除染を信じる人がいる限り、除染目的のEM商品を売り続けることが出来ます。

第二の既視感
 諫早湾の潮受け堤防開門に関して、賛成する漁業団体と反対する農業団体がそれぞれ裁判を起こしています。
諫早湾の潮受け堤防開門に関する裁判があることを知って、ある事件を思い出しました。
 EM発祥の地・沖縄県で、EMがどの様に地歩を築いたかを調べた吉野航一氏の研究が、宗教と社会誌に掲載されています。プレビューをクリックすると全文読めます。
沖縄における「EM(有用微生物群)」の受容 : 公的領域で語られたEM言説を中心に
多少強引に要約すると、EMに対しては様々な批判があり、県農業試験場での否定的な結果が繰り返し出されたにも関わらず、沖縄県の地域振興策に制定され、政治的な地位を先に築いてしまい、九州沖縄サミットを通じて、国策にまで取り上げられてしまったと言えます。
 その過程で、ニセ科学が地位を固める状況に危機感を覚えた具志川市(現うるま市)の住民グループが、EM資材を使った建築物に対して損害賠償請求の裁判を起こしました。
裁判所は、EMが混入したコンクリートでも建築基準法の基準を満たす事、EMが非科学的であることを証明する書類が提出されなかった事、を根拠に住民グループの訴えを退けました。
住民グループはその後も訴訟を続けましたが、EMの建築費に占める割合が1%程度であること、EMがうるま市の雇用に寄与していることなどを根拠に、敗訴しました。
政治的な支援を受けた企業に対して住民が戦うことの困難さを物語る出来事でした。

結び
 諫早湾の潮受け堤防に関しては2013年の12月までに開門して調査することが決まっていますが、開門に反対する人たちからの訴訟もあり、実施されるかどうか予断を許しません。
開門に賛成する人、反対する人、両方の皆さんに知っていてほしい事があります。
冒頭の比嘉氏の発言にもある通り、EMを有明海周辺で使う目的は、開門を止める為の口実だという点です。
そして、開門されない限り、環境浄化用資材としてEMの販売を続けることが出来ます。
EMの効果は科学的なものではなく、名称による商品イメージです。
政治力を駆使してEM商品を売る比嘉氏は、『政商』と呼ぶべき存在でしょう。
政商の甘言に惑わされ、亡国の道を進むことがありませんよう、皆様にお願いします。
posted by Breathingpower at 15:53| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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